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色が 光が 音が 匂いが あちらこちらで賑やかにはじける嬉しさ
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また、不思議な夢。

多分冬の終わり、山間の温泉で、十数件の温泉宿が集まっているところに旅行に来ている。
温泉街の中心には川が流れていて、裏手には切り立った大きながけがある。
そのがけにはイヌワシのようなかんじの大きな猛禽類が住んでいて、そのすみかの近くを見学するツアーがあったので、参加してみた。

ひとつがいの茶色くて白い斑の入った羽をもつワシのような鳥で、スタート地点の斜め上、断崖の中腹、岩が削れてへこみ、テラスのようになっているところに寄り添って、足をしまいこんで寝ているふうだ。
ガイドさんがもっと近づけますよ、と崖の階段を上りはじめる。

と、一羽が起き上がり、すっと空中に滑り出した。
羽ばたくでもなく、悠々と風に乗り、だんだん上昇して崖の向こう側へと消えていった。

そのまま自然のテラスのすぐ横まで上った私たち(ガイドと観光客3人)は、ガイドさんに言われたとおり、目をワシに向け、こんにちは、と小さくつぶやきながらゆっくりとテラスの端に上がった。
テラスは横が5,6メートル、奥行きが3メートルくらいあり、畳で9畳分くらい。
私たちが上がったすぐよこには、大きなつつじの木が2本あった。
片側の端に私たちが、反対側の端に羽をたたんでいても頭から尾の先まで1m50cmくらいはありそうな大きな鳥がいて、崖の外側にからだを向け、頭をこちらに向けて真っ黒い瞳でじっと見ている。

ガイドさんが、こんにちは、お元気?と話しかけながらゆっくり近づいていくと、彼(後でオスだと分かる)はふわっと一瞬羽を広げるようにしてこちらに向き直り、首を下に下げてまるで挨拶をするようなしぐさをした。
私たちも思わず会釈をする。
彼は小さくジャンプするようにしてテラスの中央に来て座った。
私たちも何かに引き寄せられるように中央に近づく。
1mくらいの距離で向き合い、私がしゃがんだまま手を差し出すと、彼はまた羽を一瞬広げて少しからだの向きを変えて近づき、私の手が彼の羽の付け根、肩の辺りに触れるようにした。
羽の上からでも、軽くて効率のよい筋肉質のからだつきがわかる。

その後私たちは彼の周りに半円を描くように座った。
ガイドさんが、彼らは今子育ての時期で、卵をあたためているのだと説明した。
しかし周りに卵は見当たらない。
不思議そうな私たちを見た彼がたたんでいた羽を広げ、少し起き上がるようにしておなかを見せてくれた。
そこにはカンガルーのような袋があり、ごつごつと膨らんでいる。
彼はオスだけれど、卵をあたためるのはオスの役目なのだという。
彼らの卵の殻はカメの卵のようにやわらかいのだ、とガイドさんが説明すると、彼は首を振って頷くようにしている。
メスは冬から初夏にかけて5回ほど卵を生むそうだ。
一回に生むのは20個ほど。
そのうち約半分は産み落とされた時に割れてしまう。
残りはオスのおなかの袋に入れられてあたためられるが、割れる率が高く、一シーズン約100個の卵のうち雛が生まれるのは2個か3個にすぎないのだという。
さらに成長するのは一シーズン1羽に限られている。
雛の間で競争があるからだ。

その日はそれで崖を下りたが、その後も時々崖の階段を上り、テラスに上がっていた。
オスはずっとテラスにいて、メスはテラスにいることもあれば、餌を取りにだろうかでかけていることもあった。
産卵は夜なのだろうか、一度も見たことはない。
メスが帰ってきたところは何回か見たが、オスに餌を渡す様子はまるでなかった。
つつじの緑が濃くなってきた頃、ようやく一羽の雛が生まれた。
はとくらいの大きさのふわふわのグレーの雛は袋の中ではなく父親の羽の間にもぐりこんであたたまっている。
雛が餌を食べるところも、見たことがなかった。
雛は時々座っている私のひざの上に来て、ネコのように丸まった。
どんどん大きくなり、ひざの上の重さも増し、色が茶色っぽくなっていった。
卵から孵ってから2週間もたたないうち、雛がラブラドールレトリバーくらいの大きさになった頃、雛の巣立ちを目撃することができた。
父親がテラスから空中に滑り出し付近を旋回する。
雛は、幼鳥は興味深深に首を回してそれを追っていた。
父親が高度を下げてテラスよりやや下を旋回し始めると、テラスの端まで行き、身を乗り出すようにして見ていた。
そして足を滑らせたのか、一歩踏み出したのか、縁から落っこちてしまった。
あっ、と下をのぞくと、父親よりも小さいけれど、羽の色はそっくりになった子供が、何事もなかったかのように羽を広げて風に乗っていた。
そのまま、二羽は高度を上げ、崖を越えて飛んでいった。

感動して、数分そのままテラスに座り込んでいると、メスが帰ってきた。
いつもいるオスがいないのに、一瞬びっくりしたようだったが、テラスに降り立って一番奥で崖にもたれて座っている私のすぐよこに歩いてきた。
ため息のような音を立てて、隣に足を折って座りこむ。
「巣立ったのね」
低くて優しい声が聞こえた。
テラスには私しかいない。
えっ、と隣を見ると、くちばしで羽をつくろっていた彼女が顔を上げ、いたずらっぽく首をかしげた。
「びっくりした?いつの間にか覚えたの。」
彼女によれば、彼も人の言葉は分かるが、発声はできないのだという。
卵を産んでいる時期は忙しくて話も出来なかったけど…と彼女は話を続けた。
最初のガイドさんが彼女に言葉を教えたそうだ。
そのガイドさんはもう高齢で、私たちのガイドを最後に引退してしまったのだという。

話の中で、オスと子供の餌の話になった。
「彼らが食事をしているところを見たことある?」
「いいえ、一度も。あなたが帰ってきても、食べ物を渡していることはなかったし。」
「ええ、食べ物は渡さない。私は外でたくさん食べてきて、ここで卵を産む。」
それは、つまり…
「そう、たくさんの卵が割れる。孵らないものある。」
彼女はそれを当たり前のこととして、普通に語った。

その後も何回も、彼女1人のテラスを訪ねた。
秋になるまで、オスは帰ってこないらしい。
オスが一人で子供を一人前にして、また秋には次の子供を育てる準備をするのだそうだ。
つつじにつぼみが付いた頃、私は家に帰ることになった。
帰る日の前日テラスに行ってみたけれど彼女は出かけていていなかったので、帰りのバスを待っている間にもう一度上ってみた。
さよならを言うと、来年もまた来てね、と言ってくれた。
記念にそのつつじを折って持っていってよ、挿し木で増えるはずだから、という彼女の言葉に甘えて、濃いピンクのつぼみのついたつつじを一枝もらって、崖を下りてバスに乗った。

バスの中で振り返って崖を見ると、彼女が大きな円を描いて飛んでいた。
窓から手を振ると、鶴のような鋭い高い鳴き声を返してくれた。
彼女の日本語ではない鳥としての声を聞いたのは初めてだと思ったところで目が覚めた。

案の定、高い音で目覚ましがなっていました。
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もともと色がよかったわけでも
全てがいたづらだったわけでも
深くよをながめていたわけでも
ないけれど
それでも
うつりにけりな
と思ってしまう今日この頃
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